勝手にさよなら

浮遊の記録

断片

記憶力がなく、「昔あんなことがあった」という話で盛り上がる時についていけないことが多い。みんなが覚えている出来事を俺だけ忘れている、ということがよくある。暗記も苦手で、理科や社会は頑張ってもあまり成績が伸びなかったし(高校も大学も英国数で進学した)、古文や漢文ができないので現代文で点数を稼いだし、英語も単語の問題が苦手だった。断片的な記憶はあるのだが、それがいつのことかわからないし、そもそも本当に自分が体験したことなのかも定かじゃない。映画や本の世界と混同してることもあるし、夢かもしれない。でも、いずれにせよ、曲を作る時にはそういう断片から作品を広げていくことがよくあるもので、今回の新曲もそんな感じで進めていった。

Airrideは、昔友達の家でゲームをして遊んだ記憶が元になっている。タイトルも当時よくプレイしていたソフトの名前から取った。その他にも、ポテチの油でヌメヌメしたコントローラーのスティックや、その家のベランダから見える町の景色など、これまで生きてきた記憶の数々、さまざまな断片的な点が繋がりあって、星座みたいに一つの作品が出来上がる。そういう感覚が自分にはあるので、曲について聞かれた時はそういう説明をすることが多いのだが、こないだ妹に「あの歌詞の一節はあの映画を元にしているのだろう」という指摘を受けて、ああ、そういえばそんなシーンがあったっけ、、、じゃああれは俺の記憶ではなかったのか!と驚いてしまった。

歌詞というのはフィクションとノンフィクションの境界が曖昧なのだなぁとつくづく思ったのと同時に、このように、書いた本人ですらあやふやな言葉の羅列なので、人それぞれの解釈があって然るべきだと思うし、どこか一行だけでも、今のあなたに何かを感じさせたなら、それは素晴らしい断片になり得るだろうな、とも思った。