勝手にさよなら

浮遊の記録

日記 vol.5

3/7

11時から吉見宅でミックス用のデータ作成。制作工程のもうかなり最終段階。最近ようやくコンビニコーヒーの買い方を覚えた。この日も駅前のファミマでカフェラテを注文。飲みながら歩いて部屋まで向かう。今回は歌録りの前日に曲のコードが変更になるというイレギュラーな改変があり、終始あたふたした制作期間になってしまった。久々にストレスフルな期間だったので、この改変が功を奏すことを祈る。14時頃に終わり、そのまま確定申告をしに税務署へ。オンラインでも申告できるらしいが、自分は毎年わざわざコンビニでプリントアウトして税務署まで足を運んでいる。こちらも無事に終了。解放。一旦帰宅し、夕方からはずっと観たかった映画『夜明けのすべて』を鑑賞。三宅唱の映画はどれも好きだ。ちなみにYAJICO GIRLのオープニングSEは同監督作品『きみの鳥はうたえる』のサウンドトラック収録曲である。もう何年も使わせてもらっています。

 

3/9

福岡でのライブ日。前日の夕方にエアビーの宿に到着し、みんなでスーパーに買い出しに行ったり、鍋をつつきながらインスタライブをしたりして過ごした。大きなテレビがあったので、夜中はそこで晩酌しながらアニメでも観ようと話していたのだが、結構疲れていたので早めに寝ることに。朝は9時に起床。入りまでかなり時間があったので武志と駿とキャナルシティの映画館で劇場版ハイキューを鑑賞。二回目でも素晴らしかった。欲しかった特典も無事にゲット。黒尾さんが好きすぎる。武志も駿も大満足っぽくてよかった。一旦解散しドトールで読書した後、ライブハウスにイン。いろんな都市でライブをすることができて本当にありがたいです。福岡のお客さんはいつもテンションが高くて感情表現がダイレクトな印象。やってて楽しい。ライブ後にはサイン会もあり、来てくれた方はありがとうございました。自分だけ東京には戻らず帰阪することになっていたので、解散して夜行バスに乗り込む。マユリカのうなげろりんを聴きながら就寝。

日記 vol.4

1月21日

周期的に長い文章が書きたくなる時期と、言葉よりも感覚を先行して過ごしたい時期があるようで、また長い間このブログをほったらかしにしていた。年末年始はライブや主催イベントの準備、制作活動やらなんやらであまり精神的に落ち着けるタイミングがなく、実家で休んでいても、友達と遊んでいても、頭のどこかではバンドのことを考えているような日々だった。今日は久々に一日ひとりでゆっくり過ごせる日で、早めにマストのタスクを終わらせて、好きな音楽を改めて聴いてみたり、時間を気にせず読書をしてみたり、ラジオを聴きながら街を歩いてみたりしてエネルギーを回復させた。最寄りの図書館で毎月ブルータスとミュージックマガジンをチェックしているのだが、そういうちょっとした時間やインプットが、結果的には何かのアイデアの種になっていたり、新しい着想を得たり、好奇心を取り戻すきっかけになっていたりする。こういう時俺は、限界まで生産性を高めて活躍するビジネスマンの方々に恐れ慄く。彼らとは違い、自分は何よりも“暇な時間”というのに価値を感じるタイプのようで、そんな自己理解が進むにつれ、何か自分自身にがっかりさせられるような、そんな微妙な気持ちになったりする。INFPは資本主義社会との相性が悪いらしい。当たっていると思う。だがしかし生活は続く。とりあえず本日はとても充実した一日だったのでここに記録しておく。

 

日記 vol.3

10月25日

夕方、マイメン室井雅也と会う約束があり新宿へ。ラーメン屋、喫茶店、居酒屋を経由し、最後はスーパー銭湯でフィニッシュ。サウナ室にて、汗だくの男たちが水曜日のダウンタウンを観ながら控えめにクスクス笑い合い、説が終わったタイミングで一斉に水風呂へ流れ込む、そのゆるい連帯感が良かった。これを音楽人はグルーヴと呼ぶ。セブンティーンアイスを食べながら駅まで歩き、終電で帰宅。

10月28日

朝から何も予定がなかったので新しいデモ音源でも作ろうかと思ったが、なかなか気分が乗らず、音楽を聴きながらダラダラ過ごす一日に。今年はクラブミュージックばかり聴いている。R&B的なものから段々興味が移っている感覚はあったのだが、今年に入ってからそれがより顕著になった。こういうジャンルの音楽にはあらかじめ哀しさや虚しさや切なさが内包されているような気がして、どれだけ音が奇抜でも、その奥にある根源的な部分にフォーカスすると沁みてくる。孤独であることから生まれる音楽というか。人は弱いから踊るんだ、哀しいから踊るんだ、という気持ちになる。

夜は流行りのスイカゲームをやってみたのだが、昔からパズルゲームが苦手でいつまで経ってもスイカまで到達できないので、腹が立ってアンインストールした。ムカつくと衝動的にデータを消していた幼少期の頃から何も変わっていない。ちなみにスプラトゥーンもコントローラーを投げつける直前までいって、そのままゲオに売りに行ったことがある。もっと穏やかに暮らしたい。

10月30日

松本大洋の東京ヒゴロの完結巻発売日。いつもじっくり読書に耽る時は近くのサンマルクに行くことが多いのだが、今回は読みながら泣く可能性があったので自宅でゆっくり味わいながら読んだ。案の定号泣。創作する人の苦しみがありありと描かれていて、というかもう凄まじい筆致で、凄みで何も手につかなくなってしまった。凄まじい筆致で凄みがうんぬん、なんて馬鹿みたいな表現だが、こういう圧倒的な作品は明確に言語化しようとすればするほどこぼれ落ちてしまう。そしてこういう圧倒的な作品が既にある世界で俺は一体何を作ればいいのやら、と途方に暮れたような気持ちにもなる。まあできることをコツコツやるのみですが。

日記 vol.2

10月19日

新しいアーティスト写真のフィッティングのため表参道へ。宣材写真はその名の通り「宣伝素材」なので、どれだけ格好つけてキメられるか、商品価値をアピールできるか、みたいな部分もきっと大事なのだけれど、個人的にはラフな方向性も結構好きで、うーん、でもやっぱ派手な方が広がるんかな、みたいなところで変に葛藤してしまい、結局2パターン用意しておいて当日決める形に。今回はガラッとイメージを変えたいと思っているので、どちらにせよ新鮮な空気感は出せると思う。

帰りに青山ブックセンターをぶらつく。東京にはまだ全く馴染めないでいるが(というか馴染む時はくるのか?)、喧騒から隔離された書店という空間は好きで、そこで本を選んでる人たちのことも自然と好意的に見ている自分がいる。こういう人たちと繋がれるサービスってないのか。と思い調べてみると、本でつながるマッチングアプリ「チャプターズ」というのがすぐに見つかった。もうこの世には何でもあるんだな、と感心するのと同時に、あるにはあるけど全部ちょっと俗っぽいんだよな、という不満も覚える。そう考えると、衣装の件も然り、どこまで俗っぽさを許容できるか、というのが今の自分にとっての課題なのかもしれない。

帰宅すると、櫻坂46のニューシングルが届いていた。小見山峻氏の撮影で、ブックレットが過去一レベルで良い。また時間がある時に特典のブルーレイも観よう。

10月21日

二日酔い気味で昼に起床。昨日は久々にたくさん飲んだ。本日は知人と会う約束があり渋谷へ。『北極百貨店のコンシェルジュさん』という映画に付き合ってもらい、その後コメダ珈琲にて雑談。年一くらいでしか遊ばない人なのだが、会うといつも楽しいので嬉しい。それにしても映画めちゃくちゃ良かったな。オススメです。帰りには電車から花火が見えた。4年ぶりの多摩川花火大会だったらしい。

帰宅後はキングオブコントを視聴。漫才よりコントの方が型として好みなこともあり、個人的にはM-1グランプリ以上の熱量で毎年楽しみにしている。今年もめちゃくちゃ面白かった。ニッポンの社長を応援していたのだけれど、サルゴリラの優勝は大納得。小道具が気持ち悪いマジシャン、例え話を魚で言ってくる野球部の監督、2本とも目の付け所が秀逸で、高い演技力でリアリティラインを調整してる感じも凄まじかった。大会全体を通して、腹がちぎれるほど笑えるシーンがいくつもあって、お笑いってやっぱり素晴らしいな、と感謝の念を抱く。

10月23日

昼、撮影。衣装への葛藤は杞憂に終わり、間違いなく良い仕上がりになると思う。夕方にあった新曲のミックスチェックも大満足で終了。お披露目が楽しみです。撮影に向けて食事制限を自分に課していたので、夜は久々に暴食。腹パンでダウン。

日記 vol.1

10月7日

全国ツアー「みんなコレクティブ」横浜公演。学生の頃から聴いていたPELICAN FANCLUBとのツーマンということで、珍しく出番前にハイボールを一杯飲み、アルコールの入った状態でステージへ。オープニングのテンションを上げる効果はあったが、集中力が続かなかった気もする。今後は控えようと思う。客入りは良く、総合的にはグッドなライブだったかと。苦手な中打ちはエンドウさんが回してくれた。本当は主催側でもてなせたらいいのだけれど、このバンドにはそういう役割を担える人がいない。強いていうなら榎本か。何にせよ楽しく過ごせて感謝。

ライブ直後の楽屋にて。

10月11日

ミナホの日から大阪に滞在していて、この日は久しぶりに祖母の家へ。定年後も続けていた仕事を辞めてもう3年くらい経ったが、まだまだ元気そうで良かった。テレビ番組よりもYouTubeを見ている時間の方が長いようで、スマホがあるから元気でいられる、スマホがないと生きていけんわ、と言っていた。普段はデジタルデバイスの負の側面ばかりを気にして、デジタルデトックスしなきゃ、とかばかり考えているのだが、退職後の高齢者にとっては、スマホが日々を楽しむための適度な刺激になっていると知る。夕方からはYasu(ex.Faded old city)と奈良で散歩。いつぶりかの東大寺。こんなにデカかったっけ?と驚く。いい店も多くて、理想的なローカルの在り方だなと感心した。住みたい。サイゼリヤでフィニッシュ。

10月14日

大学の友人の結婚式に出席。久々に会った別の友人が、本を借りパクしてたお詫びにと図書券を3000円分も包んでくれて、事前に気にしなくていいとは言っていたものの、内心テンションが爆上がりしてしまった。素敵な結婚式で、美味しいものが食べれて、懐かしい面々にも会えて、大満足の一日でした。おめでとう。帰りに書店で本を2冊購入。

10月17日

昼過ぎにリハを終え、買った本をゆっくり読むため近くの図書館へ。雑誌コーナーをぶらぶらしていると文藝の最新刊が入っていて、手に取ると、毎年恒例の新人賞発表号だった。今回は短篇部門もあって、去年俺はそれに応募しようとしていたのだが、音楽制作に追われて結局書かなかったことを思い出す。バンドはチームでのワークなので、自分の意見が通らないこともあるし、やりとりしている間に変容していくこともある。思いも寄らない方向に転がるというのは、もちろん楽しくもあるけれど、やはり多少のストレスもあって、自分一人で完結できる執筆活動も同時にやれたらいいなと常々考えてはいるものの(その一つがここで文章を書くことだったりする)、小説となるといつも途中で頓挫してしまい、文章の断片がフォルダに溜まり続けている。つまらなくてもいいし、短いものでもいいから、書き上げることが大事だと、自分を奮い立たせる。

盗み聴き

先週から全国ツアーが始まった。初日、リハから本番までの空き時間、三ノ宮駅前のドトールでコーヒーを飲んでいたら、隣の女性客2人組がまあまあ目立つ声量で軽快なトークを繰り広げていて、そんなつもりはなかったのだが、盗み聴きをする形になってしまった。「めめは垢抜けてない、芋臭さがかっこええのに!」「ほんまそれ!ハルはキャスティングミスやわ!」「おばあちゃんに優しそうなとこがええところやのに」「わかるー!」

彼女たちが言うには、目黒蓮はその辺にいそうな感じが魅力なのであって、チャラいスター性のある役柄は似合わない、とのことだった。目黒蓮レベルのイケメンがその辺いるわけないだろう、と内心ツッコミを入れながらも、この馬鹿馬鹿しさ、関西弁のリズムや響きにはやはりどうしても癒されてしまう。帰省した関西人は、みんな大体これと同じような、あーこれこれ、このくだらなさ、という感慨に耽るのだと思う。

その後、彼女たちは同じドラマの佐野勇斗今田美桜の役柄についても触れ、同じようにイチャモンをつけていた。そんな言ってやんなよ。いろんな忖度があるんだよ。と、その制作陣の肩を持つ俺は、もしかしたらそうすることで俺自身を慰めているのかもしれなかった。みんな大変だけど一生懸命作ってんだよ。悪く言わないでやってくれよ。

まあそれにしても、普段東京で張っている気が和らいでいくようで、心地の良い時間を過ごさせてもらった。感謝。結局彼女たちの理想は反町隆史竹野内豊松嶋菜々子という結論らしかった。思い出補正というのは偉大だ。

上階のビルマーレイ

先日、上の階に越してきた中年男性が明太煎餅を持ってわざわざ挨拶をしに来てくれた。9月半ばになってもまだまだ暑いし、引越し作業もあってか、そのおじさんの額からは汗が噴き出していて、それが玄関に差し込む日に照らされて、発光して見えた。つぶらな瞳で、目元もキラキラして見えて、表情に悪意がなく、ビル・マーレイに似ていて、一瞬で心を許してしまうような魅力が彼にはあった。ノーガードの笑顔。それは生まれ育った環境によって備わったものなのか、厳しい社会を生き抜くために大人になってから身につけたものなのか、わからないけれどとにかくうっとりするようなダッド感。

俺はあなたとゆるやかに繋がりたいと思ったのだけれど、隣人同士のそういう関係って難しい。例えば、横に住んでいる愛想の良いおばさんと、ビル・マーレイと俺で、歩いて数分の居酒屋で話したりしてみたい。それぞれの人生について話して、その全然違うストーリーに感心したり、たまにある共通点に喜んだり、なんかあったら助け合いましょう、なんて言い合ったりしたい。この前読んだ「ふきよせレジデンス」という漫画に影響を受けたのか、そういう緩やかなコミュニティに憧れている。でも、廊下で偶然会ったりしても、今日暇です?飲みに行きません?なんてことには絶対ならないし、この先も多分ないだろう。そもそも、こんな繋がりを求めているのは俺だけかもしれないし。

上階のビル・マーレイは夜中に平均2回トイレに向かう。俺は今日もそれを彼の足跡から察する。人の気配で孤独を和らげている。