勝手にさよなら

浮遊の記録

『欅共和国2019』での『サイレントマジョリティー』に度肝を抜かれた話

今年も無事に欅共和国の入国審査に通過した。昨年、同行した幼馴染と「これは人生のハイライトだ!」と熱く語りあったのを今でも鮮明に覚えている。それほどに去年の思い出は自分にとって強大だった。ゆえに、期待も大きかった。

会場の富士急ハイランドへは夜行バスで向かった。今年は『欅共和国2018』の後に布教した幼馴染も含め、3人で行くことになっていた。幼稚園からの仲である幼馴染3人が23の歳になり、カバンの中に推しタオルやペンライトを突っ込んで、胸をときめかせながら富士急ハイランドへ向かう、というのは、なんとも奇妙で、愉快なことだなー、と思った。

開演まではグッズの列に並んだり、購入した生写真を開封したり、その生写真を交換したりした。坂道グループのライブ会場付近では、生写真の交換を行なっている市場のような場所が必ずある。僕の目当ての生写真はどれも価値が高かったらしく、なかなかトレードを成立できずにいたのだが、途中で知り合った生写真に詳しい年下の男の子のおかげで、どうにか一番欲しかった『長濱ねる ヨリ』を獲得することができた。「自分の持ってるものを全て託すから、ねるのヨリをゲットしてきてくれないか」という無理な頼みを聞いてくれたあの男の子に心から感謝したい。トレードに躍起になっている間に開演時間が迫ってきたので、急いでハイランド内の売店で腹を満たし会場に入った。

ライブが始まると、やはり楽しい。楽し過ぎる。野外ということもありメンバーのテンションも高いし、なによりも全身水浸しになるので、なんかもう全部どうでもよくなってしまう。初日だったこの日は活動休止中だった原田葵の復帰サプライズもあり、セットリストの流れも素晴らしく大満足だった。そして、最後に披露されたのが、デビュー曲のサイレントマジョリティー。これに脱帽した。本当に凄かったと思う。

アイドルグループのデビュー曲というのは、歴史の始まりを意味する極めて重要な曲だ。デビュー曲が披露されると、必ずそのパフォーマンスにはグループの歴史が重ねられる。そのメモリアルな空気感にどうやっても感動してしまう。しかし、そうであるがゆえに、楽曲自体のメッセージ性やテーマが薄れてしまうことも少なくないと思う。仕方がないことだし、必然だとすら思う。ただ、この日の欅坂46は違った。

君は君らしくやりたいことをやるだけさ
One of themに成り下がるな
ここにいる人の数だけ道はある
自分の夢の方に歩けばいい
見栄やプライドの鎖に繋がれたような
つまらない大人は置いて行け
さあ未来は君たちのためにある
No!と言いなよ!
サイレントマジョリティ

こう歌いながら先頭に立ち、花道を突き進む船長姿の平手友梨奈。列を乱すことなく船長に続く船員たち。彼女たちのパフォーマンス。そこに行き着くまでの演出。そして、ファンの熱狂。これらを見れば、この楽曲が"思い出"枠じゃないことは明白だった。そのグループの意志に感動したし、胸が一杯になった。欅坂46のあのデビュー曲、サイレントマジョリティーは、鮮度を残したまま、ブラッシュアップされ、説得力を増している。そして、今もなお、グループにとっての最重要曲なのである。その事実に度肝を抜かれた。

終演後の僕は、少しの間、静かに震えていた。